世の中を観る目が変わる!『日本人のための憲法原論』
恥ずかしながら、憲法については「法律の王様」「実社会にはあまりリンクしない」くらいの認識しかなかった。後者については結果的にその通りだったんだけど、その背景をじっくり知ることができた。超おすすめ。
- 作者: 小室直樹
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: 単行本
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- 国家はリバイアサンなので、取り締まるべきである。
- 刑法は、殺人や窃盗を禁じているわけではなく、それを犯した人を裁く裁判官を縛るためのもの。
- 刑事裁判とは、検察(行政権力)を裁く場であり、法に触れる捜査や手続き上のミスがあれば、被告側が勝つ仕組み(1000人の罪人を逃すとも、1人の無辜を刑するなかれ)
- 憲法や議会は、国王と領主の交渉の中で生まれたものであり、民主主義とは関係ない。貨幣経済が広がる中で、国王の権力は強くなっていった(絶対王権の成立)
- 「金を払えば救われる」と説くこれまでのキリスト教とことなり、予定説は「誰が救われるかわからない、でも少なくとも信仰をしている人の中から選ばれるだろう」という思想のため、熱心な信者を生む。その予定説は、「神の前では、国王も人民も大して変わらない(平等)」「もし神の御心にそぐわないのであれば、前例を翻しても良い(慣習法の否定)」という思想(民主主義)につながる。また、予定説は労働を美学としているため、利潤最大化の思想が生まれ、資本主義につながる。
- 17世紀、ロックは「労働によって富は増えるものである」という概念を持っていたため、人間は刹那的にいきるのではなく、未来を考えて行動し、社会が必要になった際に、その権力を国家に任せたと捉えた(社会契約説)。国家に対する抵抗権と革命権の理論的根拠が生まれる。(ホッブスは、人間は限られた富を争うため、その争いを鎮めるために、国家権力が力を持つべきと説いた)
- ロックの思想はアメリカ独立戦争に繋がる。
- ただし、アメリカ独立宣言や合衆国憲法にも民主主義という言葉は使わず、共和主義者と名乗っていたほどに「民主主義」はマイナスのイメージの言葉だった。
- そもそも民主主義は独裁を生みやすい仕組みである。アメリカはそれが分かっているからこそ、大統領選出に国民の直接投票という手段をとっていない。
- 平和主義憲法は日本の専売特許ではなく世界の3分の2の国が何らかの形で平和主義条項を持っている。加えて、平和主義を唱えていても、スイスのように常備軍持たずとも、すべての市民に防衛義務を課し、有事の時に連邦軍が編成国もある。「戦争もやむなし」という決意のみが戦争を防ぐ。
- ドイツは、世界恐慌に加え、第一次世界大戦の賠償金で崩壊寸前。ヒトラーは、公共投資による有効需要創出(後の時代のケインズの理論)により不況から脱出させ、人民の支持を得た。次に、ベルサイユ条約の取り決めを一方的に破棄して再軍備と徴兵制度を復活させた。さらに国際連盟の管理下になっていたラインラントを強引にドイツ領に復帰させた。更に、フランスの国防計画の要でもあるズデーテンランドを要求する(ミュンヘン会議)。イギリスのチェンバレン首相は、絶対に戦争だけは起こしてはならないという思いから要求を飲んだ。
- ソ連のフルシチョフは、キューバに核ミサイルを設置。その際、ケネディは「キューバのミサイル基地が撤去されなければ、ソ連からの攻撃とみなして、直ちに攻撃する」と一歩も引かない姿勢をとった。結果、ソ連が折れ、全面核戦争を免れた。