欲望で世の中を切り取ります

欲望というモノサシを使うと、世の中の不条理が合目的であることが理解できます

お金をかけるか、流行にのるかだけでないゼロからブームを作る方法『99.9%成功するしかけ』藤田康人

社員4人の小さな食品素材メーカーがゼロからキシリトールで2000億円市場を作った話が載ってます。
僕にはスゴイ刺さりました。

これまで色々なヒトに聞いて出てくるのはいつも、「市場を大きくするならお金掛けるしかない」「あるいは、流行りだしている市場に乗るしかない」という二元論でしかなく、お金がない僕たちが、ゼロから何かの大きなムーブメントを作れる気になるものでは全くありませんでした。この本は、キシリトール・食物繊維をゼロから大ヒットさせたその方法が書かれています。


まず食品業界で大ヒットが生まれにくい制約がこれだけありました。

  • POSをベースとした小売店の販売管理が厳しく、すぐに棚から降ろされてしまう。そのため、長期的な商品開発ができなくなる。
  • 機能性食品のロングヒットは難しい。あれだけヒットした健康茶もブームが終わってしまう。その要因は、薬事法のしばりによって、表現方法が大きく制限されているからである。
  • トクホも多大な研究費用が必要な割に、「おなかの調子を整える」などの緩やかな表現しか認められず、消費者へのインパクトはあまり強くない。


その中で、虫歯予防となるキシリトールを日本で広めようとしたわけです。
まず消費者は、そんな概念知りません。
そして、周辺プレーヤーは、以下のような理由で抵抗感がありました。

  • 歯科医たちは、「虫歯が予防されたら、歯医者にこなくなる」と思い、抵抗感があった
  • メーカーは、日本中のだれもしらないキシリトール入りのガムで、さらに2割高いとなると、流通が棚を貸してくれないだろうし、すぐ終売してしまう。だから、開発するだけ無駄である。


彼はどうしたかというと、相手に夢を語って巻き込むこと・相手より更に決定権が強い相手を説得したのです。

  • 歯科医たちに「予防歯科」による市場拡大を説いた。実は虫歯になってる人は人口の10%程度であり、予防歯科によって残りの90%のヒトにアプローチできること。またその人たちを定期的につなげていくと、歯科医院の口コミが続くため虫歯の囲い込みにつながる。このような定期健診&顧客を囲い込むビジネスモデルを、協力してくれた歯科医と協同して開発。その結果、売上が3倍になった。
    • 歯科医というのは専門職であり、プライドもあるため、門外漢から偉そうなことをいわれたくないという思いがある。かなり専門的な知識を持つようになったが、それをひけらかさないのが重要。「私どもはビジネスマンですが、お互いに共有する夢ってありますよね。日本でも虫歯を減らしたいんですよね」と社会的なミッションを提示していきながら進めるのがこつ。「先生は1日に患者を何人みられますか?その素晴らしい思いや治療技術を、先生が障害に提供できる人は限られてますが、われわれと組めば、そのノウハウをメディアを通じて、一夜にして何千万人もの人に紹介できるわけです」という。こうした夢を語る中で、「お前はどれくらい歯科のことをわかっているんだ」という話になったときに「にわかべんきょうではありますが・・・」とこれまでに蓄積した知識の一端を示せば「こいつやるな」となるわけです。
  • メーカーが本腰を入れないときは、メーカーより更に消費者側のコンビニや量販店を口説く。メーカーより、流通の方が、消費者がどう思ってる、実際フィンランドでも売れているといった内容で説得しやすい。流通サイドからアプローチがあれば、メーカーの態度はガラッと変わる。
    • 「売れる個数が同じでも、売価が2割高いので、売上が2割あがりますよね。それってうれしくないですか?」ともちかける。当然ながら、相手はそんなことあるのかな?となる。そこで、フィンランドの成功事例などを紹介し、日本導入に向けてのマーケティングプランを説明して、相手に納得してもらえるまで、お互いじっくりと話し合う。「そうか、そんなことができるんだ。で、どこのメーカーから出るの?」となったら、流通からアプローチしてもらえばよい。


また、一時のブームで終わらないように、商品をライフスタイル化する努力を忘れませんでした。

  • ガムをかまない「ノン・ガム・ユーザ」が50%を占めてました。焼肉屋店でもらうとか非日常で噛んでもらうようなものでは売上に限界がありました。毎食後かむといったように、そのヒトのライフスタイルの一部になってしまえば、需要も定着するわけです。「食後にかむと効果的です」といった単なる事実ではなく、「食卓の上にキシリトールガムが置いてあり、テレビを観ながら、なにげなくそれを口に放り込む」といった光景を提示することが重要なわけです。「車の中においてある」「深夜にネットしながらかむ」「会社でサラリーマンやOKが眠気覚ましにかんでいる」「禁煙中に一石二鳥でキシリトールガムをかむ」など、ストーリー案はうかんできます。ライフスタイル化の象徴として生まれたのが、ボトル入りガムです。ほしいときに買うのではなく、家やオフィスに常備して、日常的にかむというライフスタイルにしたわけです。


その商品が持つコアコンセプトをトコトン見つめて、そしてそれに絡む全てのヒトと深く深くコミュニケーションを取り、そして、みんなにとってハッピーな戦略を打ち出すというトータルコーディネートの賜物というわけです。

ふーー、これをやるのか、俺は・・・という思いで、いっぱいです(笑)