欲望で世の中を切り取ります

欲望というモノサシを使うと、世の中の不条理が合目的であることが理解できます

資本主義のフレームってドラゴンボールと同じだな『資本主義の極意』佐藤優

この本で、政治経済について物事を考えるフレームワークを手に入れた気分です。


1.資本主義の起源には、労働力の商品化がある

まず始めに、貨幣で交換できる”商品”があることが出発点です。そして、自給自足で成り立つ経済ではなく、すべてのモノが貨幣で交換できる商品経済になった世界を、資本主義経済と言う。資本とは、カネの元手のことであり、ようは、元手があれば、勝手に廻っていく仕組みということだと思う。

では、自給自足経済と、商品経済を分けるものとは何か?というと、労働力が商品化したかどうかです。これは、「あさが来た」という朝ドラでも如実に表れている。両替商を行っていた江戸時代は、丁稚奉公と一緒に暮らしていたわけです。ファミリー、みんな一心同体なわけです。それが、銀行になってからは、給料を払い、別々に暮らすようになる。代わりに、格式が高い家の娘さんを優秀な社員として雇うことが出来るので、カネを稼ぐ、ため込む力が飛躍的に増えたといっていい。

2.労働力の商品化は、きっかけがあって起きる

労働力の商品化は、「身分的な制約や土地への拘束を離れて自由に移動できること」「自分の土地と生産手段を持っていないこと」という二重の自由があって成り立つ。イギリスでは、大寒波⇒毛糸の需要が高まる⇒地主が農民を追い出して羊を飼う(囲い込み)⇒都市に出てきて毛織物工場で働くという、いわゆるエンクロージャーが起きて、労働力の商品化が起こる。これを引き起こしたのは、大寒波という偶然に過ぎない。日本の場合は、まず、富国強兵を目指して、国家が主導して、税金をつぎ込んで、富岡製糸場のような、工場を建てる。ここで働いていたのは士族の子女であり、採算は度外視なわけで、資本主義的論理で物事は動いていない。それが、西南戦争をきっかけに、以下の2つのことが生じ、労働力の商品化が起こる。

  • 戦争をきっかけに財政難になり増税。税金を払えなくなった農民が土地を手放し、都市に流出する。
  • 国家が、工場を三井・三菱などの民間企業に払い下げる

3.資本主義原理論では、常に、恐慌か戦争かの二択を迫られる

サイクル(好況⇒労働力不足⇒賃上げ⇒利益低下⇒恐慌⇒イノベーション⇒好況)を通じ、労働力の商品化が拡大し、労働者・資本家・地主の3つの立場に完全に分かれていくというのが原理論だ。この原理論において、投資するカネはあるけど労働力が高すぎて投資しても利益が出ないときに、投資するカネが余ってしまう資本の余剰がポイント。

そのまま、恐慌に突っ込むか、それを回避するには、その資本を戦争に突っ込むというのが最大の政策です。安部政権がステルス戦闘機F35の部品輸出やオーストラリアの潜水艦の共同開発など、経済の軍事化を進めるのは、資本を処理する近道だからだ。

4.重化学工業が植民地政策を生む

重化学工業は設備投資に多くのおカネが必要であり、一人の投資家の資金でなんとかなるものではなくなるため、銀行からおカネを借りたり、株式を発行するということが起こる。借金や株式でおカネが作れるようになると、景気に左右されずに(好況だからいまのうちに設備投資しておこう 等)、イノベーション(生産設備の増強)が起こる。つまり、純粋なサイクルからは逸脱していく。

こうして巨大化した株式会社や銀行が、より多くの利益を求め、資本を輸出していく。それを国益ととらえる国が、植民地政策を展開するというのは、想像に難くない。

5.まとめ

なぜか、資本主義の話を聞いて、ドラゴンボールを思い出した。彼らが強くなるポイントは、二つ。強大な敵が現れること(=戦争)と、死に損なうこと(=恐慌)だ。

数年間修行しても、1.2倍くらいの強さにしかならないのだけど、ひとたび強大なサイヤ人という敵があらわれることで、昨日までの敵であるピッコロと手を組んで、10倍、20倍もの強さを手に入れるわけだ。つまり、強さ(=資本主義)を拡大していくには、外の存在が必要ということ。

また、カリン塔で、超神水を飲むことで、数倍の力を手に入れるエピソードがあるが、これは死ぬ寸前まで追い込み、それを克服することで、強さ(=資本主義)を拡大することを意味する。